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蔵元だより

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いわての酒米、結の香

2013年春、岩手県内である酒米が話題になったことご存知でしょうか。その酒米の名は『結の香』。岩手県工業技術センターを中心に、岩手県内の酒造組合、農家、農業研究センターとその関係者達、オール岩手で開発に取り組み、生み出された新品種の酒米が『結の香』です。

トレボン・マリアージュ第2回では、岩手県工業技術センター 醸造技術部 部長の米倉さんと、専門研究員の佐藤さんに『結の香』の開発についてインタビューを行いました。開発にかける想いとはどのようなものだったのでしょうか。

結の香 その誕生にこめられた想い

― 本日はよろしくお願いします。まず初めに『結の香』の開発に至った経緯を教えていただけますか。

米倉部長(以下、米倉):
はい。岩手県内の地米がほしいとの要望で生産されるようになった、『吟ぎんが』や『ぎんおとめ』といった酒米が、2000年頃から広く出回るようになっていました。

しかし、これらの酒米は50%精米の吟醸用として開発した酒米だったので、酒屋さんから次第に「”大吟醸”にも使える最高級のお米が欲しい!」という強い要望が上がるようになり、酒米の代表とも言われる山田錦に匹敵するようなお米を作るため頑張ってきました。こうして生まれたのが『結の香』です。

大吟醸用の酒米開発を始めたのは2000年。結の香の交配が始まったのが2002年からでした。10年以上かけてようやく『結の香』で造られた日本酒を販売することができました。当センターのほか、農業研究センターや農家さん、酒蔵さんと協力し、たくさんの人の結びつきから生まれた酒米です。『結の香』の「結」にはそういう意味が込められているのです。

岩手県工業技術センター 米倉部長

結の香 開発秘話

― 酒米には様々な品種がありますが、『結の香』はどのような特徴を持った品種なのでしょうか。

40%まで磨いた「結の香」 ※ 心白とは、お米の中にある白く不透明な部分でデンプンが詰まっている部分。この心白は吸水しやすく、麹菌が入りやすいので酒米として好まれるが、脆く砕けやすい。

米倉:
まず『結の香』を作るまで長年に渡って何千種という品種の掛け合わせを行なってきました。その中で「山田錦」と「華吹雪」を掛け合わせた酒米の「華想い」という品種に注目しました。この「華想い」に「山田錦」を掛け合わせて生まれたのが『結の香』なのです。

特徴は、タンパク質が少ないため、きれいなお酒が作りやすいことです。各社の技術が味に出やすい酒米だと思います。また心白がお米の中央に揃いやすいことも大きな特徴ですね。酒米の精米時に心白が割れてしまうことがありますが、『結の香』は心白が中央に揃いやすいので、割れにくいという特徴を持ちます。

― どのようにして、心白が中央にあることを確認しているのでしょうか。

佐藤:
当初は、お米ひとつひとつを輪切りにして目視で判断するしかありませんでした。ですが、1粒1粒を撮影して心白の位置を示す平均画像を検出するシステムを開発することに成功しました。それまで1粒1粒手作業でスライスしていたので、測定に膨大な時間が掛かっていましたが、今ではシステムを使うことで2〜3時間で完了します。現在このシステムは特許を申請しているんですよ。

米倉:
また栽培方法もある程度確立できたので、栽培方法をきちんとすれば心白が中心に揃うようになりました。日照時間や肥料、植える時期などの栽培実験も3年を掛け、ようやく形になってきたので農家さんに協力を頂きながら、さらに品質を上げて安定させていきたいと考えています。

慣れた手つきで「結の香」を選別する佐藤さん

― 多くの時間と手間をかけて生まれたのが『結の香』なのですね。2013年には県内各酒蔵から新酒が発表されましたが、評判はどうでしたか。

米倉:
鑑評会で入賞をすることを目指して作ってきた酒米です。最高の米と最高の技術で各社に創っていただきました。各社からの評判は良く「山田錦にも劣らない米だろう」というお声も頂きました。消費者からも美味しいとのお声を頂いており、1年目にしていい出来のお酒ができたと思います。県外からもお問い合わせを頂きました。

2013年は13社に生産していただきました。興味深いことに、同じ酒米を使っているにも関わらず、味わいは全て違うものでした。各社の技が味に反映された結果だと思います。2014年秋の岩手県清酒鑑評会では、『結の香』で造った純米大吟醸酒が「吟醸の部」で1社が金賞に、「純米の部」で1社が銀賞を受賞しました。

また、2014年全国新酒鑑評会では、純米大吟醸「結の香」を出品した蔵もあり、見事金賞に輝いています。秋の東北清酒鑑評会「純米の部」では、岩手は4社優等賞となりましたが、そのうち2つが『結の香』を使用したお酒でした。

13社が醸した純米大吟醸「結の香」

『結の香』は、ラベルにもこだわりを持っております。オール岩手で生産しているとの想いからラベルデザインは統一し、酒蔵ごとにラベルの色分けをしました。ラベルの色には、日本の伝統色を用意し、各酒蔵にはその中から選んでいただきました。

今後は、岩手県内の全酒蔵で生産できるくらいの収穫量を目指していきたいと思います。きちんと技術を受け継ぎながらお米作りを行ない、徐々に生産量を増やしていければいいですね。

岩手県工業技術センター研究室にて、米倉部長(左)と佐藤さん(右)

― 各酒蔵の日本酒を揃え、飲み比べてみるのも面白いですね。本日は大変興味深いお話を聞くことができました。お二人とも、貴重なお時間をいただきありがとうございました。

米倉・佐藤:
ありがとうございました。

南部美人が醸しだす『結の香』

―南部美人では、試験醸造段階から『結の香』の開発に参加していました。その当時の舞台裏を松森杜氏が語ります。新品種の酒米は、匠の眼にどのように映ったのでしょう。

南部美人 松森杜氏

松森杜氏:
『結の香』を始めて手にしたのは2013年11月頃だったと記憶しています。第一印象は、心白が揃っていて良い酒米だと思いましたね。実際に水を吸わせてみても割れにくく扱いやすいお米という印象です。

最初の年は、吸水の加減がつかめず、若干想像していたより重い味のお酒になってしまったのですが、2014年には吸水の特徴をつかむことができましたのでいいお酒になりました。南部美人が得意とする、飲み飽きないソフトでなめらかな味わいを楽しむことができます。

―南部美人が醸す『結の香』。お客様からはどのような反響がありましたか。

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お客様からも美味しいとの評価を頂いております。親品種である山田錦のスッキリとした味わいが、この『結の香』にも引き継がれているのでしょう。おかげさまで、2014年は岩手県清酒鑑評会の「純米の部」にて銀賞をいただくことができました。

現在は南部美人ウェブサイトや、県内外数ヶ所のお酒販売店にて販売を行っています。残念ながらまだお米の収穫量自体が少ないので、タンク1本程度のお酒しか生産できないのです。今後、生産量が増えていくことを期待したいですね。

およそ10年もの歳月をかけて開発された岩手県オリジナルの酒造好適米『結の香』。岩手県のお酒に関わる人々が造った特別な酒米から生まれた、南部美人自慢の「純米大吟醸酒 結の香」をぜひご堪能ください。

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